印象評価をしてしまう理由
とてもとても不思議なことですが、(逆に言うと当たり前のことなのですが)社会人として経験を積めば積むほど「私には人を見る目がある」という「錯覚」が生まれます。
「錯覚」と断言するのは失礼なことだと思いますが、あえて言わせていただくと、「自分には人を見る目がある」と思うことは「錯覚」です。そして多くの人がその事実を薄々知っておりながら、いざ面接となると、その「錯覚」が脳を支配してしまうようです。
それが印象評価をしてしまう最大の理由です。
「薄々、錯覚だと知っている」というのはなぜかというと、やはり経験を積むほどに、「見込み違い」の経験値も増えてゆくからです。
「この人あまり使えないな」
と思っていた人が、存外に活躍したり、またその逆もあると言うことを経験が教えてくれているのだと思います。ところが、「面接」という時間の限られた、ある意味特殊な場面になると、人は積み重ねた経験の中からもっともシンプルな結論を選び取る傾向があるようです。
この傾向については2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏の研究を分かり易く説いた「ファスト&スロー」という書籍に詳しく書かれています。この内容については、記事「なぜ印象評価をしてしまうのか」でもう少し詳しくご説明します。
要するに
なんとなく直感で判断する思考のことをダニエル・カーネマン氏は「ファスト思考」と呼び、統計的知識を加えてじっくり検討する思考を「スロー思考」と呼んでいます。
どうも面接という場面では、多くの人が「ファスト思考」に走るため、印象評価になってしまうと言うのが私の考えです。
このような「面接傾向・思考傾向」を改善するためと、日本の採用事情とが相まって、2005年前後から各企業が採用面接において導入し始めたのが「コンピテンシー面談」です。
コンピテンシー面談とは
昭和の時代の面接は概ね「印象評価」にとどまっていたと思われます。もちろん当時から自己PRくらいは質問していましたが、あとはそのときの面接官の「学生に対する印象」でその都度質問を変えて良い意味で適当に質問することでその学生の善し悪しを判断していました。
バブルがはじけ買い手市場になると、今度は「落とす面談」=圧迫面談、が面接手法の主流になります。2003年くらいまでは、この印象評価と圧迫面接の混同型の面接が多かったと思われます。
しかし、1990年代後半から各企業で徐々に導入が始まった「成果主義評価」の影響を受け、面接においても、これまでの「何となく」の面接手法では良くないという機運の中で、コンピテンシー面談が導入され始めました。
コンピテンシー面談をごく簡単に説明するとすると、
1,学生が経験してきた事実を5W1Hで、その経験した場面ごとに浮き彫りにしていく。
2,そのプロセスで、困難な事例や、自ら主体的に取り組んだ事例、自ら主体的に工夫して乗り越えた経験のある学生を選ぶ。
3,そのような学生は、入社したあとも「困難な事態に主体的に取り組み工夫を重ねるだろう」とい行動の再現性」の考え方に立脚して、そういう学生を採用する。
大体こういう考え方です。
これによって、「印象から事実の吟味」と評価のポイントが大きく変化します。
